日本人、中国人ではなく『火間土』のやり方
海外で事業を展開する多くの日系企業の管理職の方々も、大いに悩むところなのが現地の人々とのコミュニケーションです。対お客様以外にも、社員教育は最も難しい課題とも言えるでしょう。
『火間土』の店長野村さんにそんな海外店舗での難しさもインタービューしてみました。
Q:こちらではいつ頃から店長としておつとめですか?
野村店長:2006年からです。ここへ来る前は台湾の店舗にいました。台湾へ来る前はいろいろと修行の日々が続いていましたね。まずはものの考え方だとか、コミュニケーションのとり方だとか、毎日、毎日、反省文を書かされていました。それからみんなの嫌がる仕事を率先してやる。
Q:みんなが嫌がる仕事ですか?
野村店長:そうです。(笑)海外で信頼関係を築くために、人が嫌がることをまず自分でやれるようにならなければなりません。簡単な話便所掃除だとかごみすてだとか皿洗いだとか、言葉も不自由な中では口先だけの奴では信用されません。実際、そういうことをやっていると信頼されるようになってくる。アルバイトの人からみて、なんか分からんけど、えらそうな人が来て掃除をしてるぞ、この人は仲間だなという感じですね。
Q:店長さんでもごみ捨てや皿洗いされるんですか?中国では考えられないことではないですか?
野村店長:はい。「店長は皿洗いなどしなくていい。」実はバイトの子に言われたんです。なんで店長が皿洗いをするんだ?それは、今、誰かが皿を洗わなければ、お客さんに出す皿がないということもあるでしょ?プライドばかりでは、いざ今、皿洗う人がいませんという事態になった時、店長が暇そうにしていたら、お前が洗えよという話になる。プライドは結果に対してだけ持てばいいと、そういうことです。
Q:なるほど。でも習慣の違いなどで戸惑うこともあるのでは?
野村店長:もちろんです。日本では始業時間前には全員が揃うのが当たりまえ、しかしここ中国では5分の遅刻までは皆勤賞に入る。五分までの遅刻は遅刻ではない。他の飲食店に聞いても、五分までの遅刻はセーフ。お互いに育ってきた環境や背景や国の思想なども違うので、僕にとって当たりまえのことも、彼らにとっては当たり前じゃないことがある。
Q:そういう時はどうされるんでしょう?
野村店長:いきなり頭ごなしにこれはだめです、と言うよりも理由を説明しお互いを尊重して新しいもっといい意見を出そうと提案します。当たり前のことですが、日本人だから、中国人だからというのはよくない。それではよい案は出ないわけで、お互いの違いについて、背景についてよく話し合い、どちらのやり方がというのではない、私たちがよく使うのですが、「第三案」つまりお互いを尊重した勝ち負けでない「第三案」を出そうというのが狙いです。
Q:お客様とのコミュニケーションはどうでしょう?
野村店長:お客様の反応は、注文されるお料理に反映されます。やはり日本人が好む味と中国人やその他の国の方が好まれる味に違いがあることは否めないことです。けれど、その中にも必ず「第三案」が隠されています。目に見えない「第三案」に対しては時にはアンケートをとりながら、時には厨房での調理人との葛藤のなかで、お客様とのコミュニケーションが円滑に進むような自分なりの努力を欠かさずに精進することでしょうね。
Q:お客様へのサービスで気をつけていることはありますか?
野村店長:安全性を第一の選択基準に厳選された素材を使い、常に日本の流行を意識しつつ、誰にでも受け入れられるような商品作りに努めると共に、日本と遜色のない「行き過ぎない、かゆいところに手が届く」サービスを目指しています。例えば、お茶やテーブルを清潔にするための巡回はお客様にとっても、また衛生面や見た目にも良い印象を与えますから。
野村店長ありがとうございました。こうした努力と試行錯誤の繰り返しがよいお店作りの基本ともなっているんですね。
(取材・記事 シンセンスクエア 菅井歩美) |