まねきTVと録画ネットの違いは?
先日、海外からインターネット経由で日本のテレビ番組を見られるサービスに、新たな司法判断が下されました。著作権法に違反するとしてNHKや民放が業者にサービス中止を求めていた仮処分申請が却下されたのです。以前、「録画ネット」が差し止めとなっていただけに今回の判断は放送業界に大きな衝撃を与えました。
TV局が訴えていたのは、東京都でコンピュータ機器製造・販売・保守を行う永野商店が運営する「まねきTV」というサービスです。ソニーの「ロケーションフリーTV」のベースステーションを使って、利用者がネット経由でテレビ番組を視聴できるサービスで、海外在留邦人や地方のユーザーが日本のテレビ番組を簡単に見ることができます。
NHKと在京民放5局は2006年2月、サービスが放送局の著作隣接権を侵害するとして仮処分を申請し、このサービスが「不特定」の者に対して、テレビ番組の送信可能化行為を行っていると主張しました。
<NHKと在京民放5局の主な主張>
(1)(使用しているロケーションフリーTVは)自動公衆送信機能を持っている限り、用途に関係なく著作権法の「自動公衆送信装置」に該当する。
(2)申し込めば、誰でも加入できるので、利用者は「不特定」にあたる。
(3)送信を可能にしているのは実質的に「まねきTV」である。
一方、永野商店側は以下の主張を挙げて反論しました。
<永野商店側の主な主張>
(1)利用者が自前の機器を使って、自分で放送をデジタル化している。
(2)それぞれのベースステーションは利用者の端末と1対1で独立して機能するものであり、公衆に送信するものではない。
この結果、東京地裁は、長野商店側の主張をほぼ認め、サービスが公衆送信にはあたらないと判断し、著作隣接権を侵害したとは言えないとしました。これにより各局が求めていたサービス中止の仮処分申請が却下されました。
著作隣接権とはあまり聞きなれない法律用語ですね。では、審議を問われたこの著作隣接権とは一体どんなものなのでしょうか?
著作隣接権とは著作物の創作者ではありませんが、著作物の伝達に重要な役割を果たしている実演家(俳優、舞踊家、歌手、演奏家、指揮者、演出家など実演を行う者。アクロバットや奇術を演じる人も含む。)、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に認められた権利のことです。これらの中で放送事業者の権利は以下の通りです。
<放送事業者の権利>
:複製権:
放送を録音・録画及び写真的方法により複製する権利
:再放送権・有線放送権:
放送を受信して再放送したり、有線放送したりする権利
:テレビジョン放送の伝達権:
テレビジョン放送を受信して画面を拡大する特別装置(超大型テレビやビル壁面のディスプレイ装置など)で、公に伝達する権利
:送信可能化権:
インターネットのホームページなどを用いて、公衆からの求めに応じて自動的に送信できるようにする権利
:著作隣接権の保護期間:
放送又は有線放送が行われたときから50年
ネットを利用した海外在住者向けのTV視聴サービスは、TV局からの訴えで2004年末にサービス停止の仮処分を受けた「録画ネット」の例があります。(詳細は海外ネット配信違法性の検証No.2を参照)これは録画機能付きのパソコンを遠隔地のユーザーが操作して、テレビ番組を録画・視聴できるようにしたサービスでした。
このケースでは録画ネット側が異議を申し立て、裁判所側がこれを却下、後に抗告という経過を辿りましたが、2005年11月、録画ネット側が最終的に和解を受け入れ知財高裁が最抗告を棄却し、TV局側の勝利が確定しました。
こうして裁判の流れや最終的にユーザが受けるサービスだけに視点を置いてみると「まねきTV」サービスとさして違いのないように感じられますが、それぞれの裁判所の決定書を精査するといくつか異なる点が明らかになります。
まず、「まねきTV」はロケーションフリーのベースステーションをユーザー自身が購入し永野商店に送付します。このためベースステーションはユーザの所有物として法律上みなされました。
これに対し、「録画ネット」は業者が調達し、退会の際は他の利用者に譲渡の選択ができるようになっていました。
また、「まねきTV」は利用者が各自の所有するベースステーションで放送波を受信しているのに対し、「録画ネット」は機器が業者の管理下にあり所有権の移転が仮想されていると判断されました。
つまり、「まねきTV」が人の機器を預かるだけの「ハウジング」サービスであるのに対して、「録画ネット」は録画・転送を管理する「ホスティング」サービスであると認定されたのです。このため、「まねきTV」は公共送信ではないと判断され、この違いが全く逆の決定をもたらしました。
「まねきTV」はベースステーションと端末が1対1に限られるロケーションフリーTVを採用することで「録画ネット」で法的に弱かった部分をスキなく固め、「公衆送信権」侵害でないことを裁判所に認めさせたと言えるでしょう。
とはいえ、一般ユーザーからみるとどう違うのかは非常にわかりにくいのも事実です。また、TV局側も裁判所の判断に対して納得しておらず即抗告する方針を示しており、争いは長期化することは避けられないようです。
<バックナンバー>
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TV局が訴えていたのは、東京都でコンピュータ機器製造・販売・保守を行う永野商店が運営する「まねきTV」というサービスです。ソニーの「ロケーションフリーTV」のベースステーションを使って、利用者がネット経由でテレビ番組を視聴できるサービスで、海外在留邦人や地方のユーザーが日本のテレビ番組を簡単に見ることができます。NHKと在京民放5局は2006年2月、サービスが放送局の著作隣接権を侵害するとして仮処分を申請し、このサービスが「不特定」の者に対して、テレビ番組の送信可能化行為を行っていると主張しました。
<NHKと在京民放5局の主な主張>
(1)(使用しているロケーションフリーTVは)自動公衆送信機能を持っている限り、用途に関係なく著作権法の「自動公衆送信装置」に該当する。
(2)申し込めば、誰でも加入できるので、利用者は「不特定」にあたる。
(3)送信を可能にしているのは実質的に「まねきTV」である。
一方、永野商店側は以下の主張を挙げて反論しました。
<永野商店側の主な主張>
(1)利用者が自前の機器を使って、自分で放送をデジタル化している。
(2)それぞれのベースステーションは利用者の端末と1対1で独立して機能するものであり、公衆に送信するものではない。
この結果、東京地裁は、長野商店側の主張をほぼ認め、サービスが公衆送信にはあたらないと判断し、著作隣接権を侵害したとは言えないとしました。これにより各局が求めていたサービス中止の仮処分申請が却下されました。
著作隣接権とはあまり聞きなれない法律用語ですね。では、審議を問われたこの著作隣接権とは一体どんなものなのでしょうか?
著作隣接権とは著作物の創作者ではありませんが、著作物の伝達に重要な役割を果たしている実演家(俳優、舞踊家、歌手、演奏家、指揮者、演出家など実演を行う者。アクロバットや奇術を演じる人も含む。)、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に認められた権利のことです。これらの中で放送事業者の権利は以下の通りです。
<放送事業者の権利>
:複製権:
放送を録音・録画及び写真的方法により複製する権利
:再放送権・有線放送権:
放送を受信して再放送したり、有線放送したりする権利
:テレビジョン放送の伝達権:
テレビジョン放送を受信して画面を拡大する特別装置(超大型テレビやビル壁面のディスプレイ装置など)で、公に伝達する権利
:送信可能化権:
インターネットのホームページなどを用いて、公衆からの求めに応じて自動的に送信できるようにする権利
:著作隣接権の保護期間:
放送又は有線放送が行われたときから50年
ネットを利用した海外在住者向けのTV視聴サービスは、TV局からの訴えで2004年末にサービス停止の仮処分を受けた「録画ネット」の例があります。(詳細は海外ネット配信違法性の検証No.2を参照)これは録画機能付きのパソコンを遠隔地のユーザーが操作して、テレビ番組を録画・視聴できるようにしたサービスでした。このケースでは録画ネット側が異議を申し立て、裁判所側がこれを却下、後に抗告という経過を辿りましたが、2005年11月、録画ネット側が最終的に和解を受け入れ知財高裁が最抗告を棄却し、TV局側の勝利が確定しました。
こうして裁判の流れや最終的にユーザが受けるサービスだけに視点を置いてみると「まねきTV」サービスとさして違いのないように感じられますが、それぞれの裁判所の決定書を精査するといくつか異なる点が明らかになります。
まず、「まねきTV」はロケーションフリーのベースステーションをユーザー自身が購入し永野商店に送付します。このためベースステーションはユーザの所有物として法律上みなされました。
これに対し、「録画ネット」は業者が調達し、退会の際は他の利用者に譲渡の選択ができるようになっていました。
また、「まねきTV」は利用者が各自の所有するベースステーションで放送波を受信しているのに対し、「録画ネット」は機器が業者の管理下にあり所有権の移転が仮想されていると判断されました。
つまり、「まねきTV」が人の機器を預かるだけの「ハウジング」サービスであるのに対して、「録画ネット」は録画・転送を管理する「ホスティング」サービスであると認定されたのです。このため、「まねきTV」は公共送信ではないと判断され、この違いが全く逆の決定をもたらしました。
「まねきTV」はベースステーションと端末が1対1に限られるロケーションフリーTVを採用することで「録画ネット」で法的に弱かった部分をスキなく固め、「公衆送信権」侵害でないことを裁判所に認めさせたと言えるでしょう。
とはいえ、一般ユーザーからみるとどう違うのかは非常にわかりにくいのも事実です。また、TV局側も裁判所の判断に対して納得しておらず即抗告する方針を示しており、争いは長期化することは避けられないようです。
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